最新の英語教育理論と実践的なノウハウをわかりやすく解説します。 TESOL資格取得を目指す方、英語教育に携わる方必見の内容です。
TESOL(Teaching English to Speakers of Other Languages)は、英語を母語としない人に英語を教えるための国際資格です。日本ではまだ馴染みが薄い資格ですが、海外では英語教師の採用条件として広く使われています。
この記事では、TESOLがどのようにして生まれ、世界に広まり、今の日本にどうつながっているのかを、時系列に沿って解説します。
第二次世界大戦後、アメリカには世界中から移民や留学生が集まるようになりました。英語を教える場面は増えましたが、当時は「英語を母語としない人への教え方」を専門的に扱う分野がありませんでした。
ネイティブスピーカーが感覚で教える。文法書を渡して終わり。それが当たり前の時代です。
しかし、現場では問題が積み重なっていきます。
「教える側にも、専門的な訓練が必要だ」
この考えのもと、1966年にアメリカでTESOL International Associationが設立されました。英語教育の指導法を研究し、教師を育成し、教育の基準をつくる。TESOLという分野の出発点です。
1970年代に入ると、欧米の大学でTESOLの修士課程が次々と開設されます。英語教育は「経験と勘の世界」から「研究と理論に裏打ちされた専門職」へと変わり始めました。
この時期に大きな影響を与えたのが、言語学者スティーブン・クラッシェンの「インプット仮説」です。学習者が理解できるレベルより少しだけ上の英語に触れることで、習得が進むという考え方で、今日のTESOLプログラムでも中心的に扱われています。
「とにかく聞け」「とにかく読め」ではなく、教師が学習者のレベルを見極めて、適切な難易度の素材を選ぶ。この発想は、ここから始まりました。
1980年代にはイギリスでCELTA(Certificate in Teaching English to Speakers of Other Languages)が体系化され、オーストラリアでも独自のTESOL認定プログラムが広がりました。アメリカだけでなく、英語圏全体でTESOLが教師資格の標準になっていきます。
冷戦が終わり、グローバル経済が一気に拡大した1990年代。英語は「国際共通語」としての地位を固めました。
韓国、中国、台湾、タイ、中東諸国。英語を国家戦略として位置づける国が次々と現れ、英語教師の需要が爆発的に伸びます。
同時に浮き彫りになったのが、「教師の質」の問題でした。英語が話せるだけの人を教室に立たせても、学習者は伸びない。教える訓練を受けた人が必要だという認識が広がり、海外の語学学校では「TESOL保有」が採用の条件として定着していきました。
インターネットの普及が、TESOLの取得環境を大きく変えました。
それまでTESOL資格を取るには、英語圏の大学に留学するか、現地のプログラムに通う必要がありました。しかし2000年代に入り、オンラインで学べるTESOLプログラムが登場します。
TESOLは「一部の専門家のための資格」から、英語を教えたい人なら誰でも目指せる資格へと変わりました。
日本のTESOLの歴史において、2020年は大きな節目です。
2020年度から、小学3年生で外国語活動、5年生で英語が正式教科として必修になりました。しかし、英語を教える専門訓練を受けた小学校教員はごくわずかです。中学・高校の英語教員も、英語力は高くても「教え方を体系的に学んだ」経験がない人が多いのが現状です。
コロナ禍をきっかけに、オンライン英会話の利用者は急増しました。講師の数は増えたものの、「教え方を学んだ講師」と「英語が話せるだけの講師」の違いが、学習者にも見えるようになってきています。
翻訳はAIがやる時代になりました。では、英語教師はいらなくなるのか。答えはNoです。
学習者のやる気を引き出し、適切なタイミングでフィードバックを与え、つまずきに寄り添う。これは訓練を受けた教師にしかできません。AIが進化するほど、「教えられる人」の専門性は際立ちます。
年代 | 出来事 | ポイント |
|---|---|---|
1966年 | TESOL International Association設立 | 英語教授法が専門分野になる |
1970年代 | 大学院にTESOL修士課程が広がる | 学問としての基盤ができる |
1980年代 | CELTA体系化、豪州でプログラム拡大 | 英語圏全体の標準資格に |
1990年代 | アジア・中東で英語教師の需要爆発 | 採用条件として定着 |
2000年代 | オンラインTESOLプログラムの登場 | 誰でも取得を目指せる時代に |
2020年代 | 日本で英語必修化・AI時代の到来 | 日本での普及期に突入 |
参考になるのがFP(ファイナンシャルプランナー)の歩みです。FPも1969年にアメリカで生まれた資格で、TESOLとほぼ同じ時期に誕生しています。日本に届くまで約20年。制度化されてから「持っていて当然」になるまで、さらに約10年かかりました。今では年間50万人以上が受験する資格ですが、最初は「何の資格?」と聞かれる存在でした。
FPが広まった理由はシンプルです。資格そのものが偉かったからではなく、「お金のことを教えられる人」を社会が必要としたからです。
今、同じことが英語教育の領域で起きています。英語教育の質が問われ、「教えられる人」が求められるこの時代に、TESOLが日本で広く認知される流れは、すでに始まっています。
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