最新の英語教育理論と実践的なノウハウをわかりやすく解説します。 TESOL資格取得を目指す方、英語教育に携わる方必見の内容です。
いま、日本の英語授業は大きな転換期にあります。文部科学省が掲げる「主体的・対話的で深い学び」。しかし、現場では「英語でペアワークをさせればOK」という誤解が広がっています。
TESOL(英語教授法)の視点から見ると、多くの授業が「英語の処理(作業)」に留まり、生徒の心が動く「対話」に至っていません。
この差を生むのが、TESOLが解き明かす「思考の科学」です。

教育学には「ブルームのタキソノミー」という、思考のレベルを表す階段があります。
思考のレベル | 専門用語 | 授業の内容 |
低次思考 (LotS) | 記憶・理解 | 「いつ?」「誰が?」といった事実確認。答えは教科書にある。 |
高次思考 (HotS) | 分析・評価・創造 | 「なぜ?」「どう思う?」といった推論。答えは生徒の頭にある。 |
日本の授業の多くは、この「低次思考(LotS)」、つまりただの記憶作業で終わっています。TESOLは、ここから「高次思考(HotS)」へ引き上げるための具体的な「階段(足場かけ)」を提供します。

例えば、「制服」についての授業を例に、具体的なレッスンの違いを見てみましょう。
同じトピックでも、以下の4つのステップ(足場かけ)を踏みます。
最後の問いには正解がありません。生徒は「コスト面(評価)」「個性の表現(創造)」など、自分の頭をフル回転させて英語を使わざるを得なくなります。これが「深い学び」の正体です。
「日本人は議論が苦手」というのは思い込みです。
研究(Manalo & Sheppard, 2016)によれば、英語で「なぜ?(根拠)」を考える訓練をすると、その思考力は日本語での思考にもそのまま転用されることが分かっています。
つまり、TESOLに基づいた英語教育は、単なる語学学習ではなく、「論理的に世界と対話する力(地頭)」を育てる訓練場になるのです。
「言語を使うこと」と「意味のあるコミュニケーション」を混同してはいけません。
教える側が「問いの質」を変え、意図的に高い段の階段を用意することで、授業は「作業」から「対話」へと変貌します。
生徒たちが英語を道具として使い、自分の意見で世界を切り拓いていく。そんな未来を作るための「科学」が、TESOLには詰まっています。